『ダレス兄弟』 スティーブン キンザー と 『パラノイア合衆国』 ジェシー・ウォーカー



1821年7月4日の独立記念日に、国務長官ジョン・クインシー・アダムスが議会で演説をした。

「我が国は外国まで行って悪者探しをするような外交はしない」。

極端で単純な善悪二元論、アメリカ例外主義、明白なる天明(宿命)、

門戸解放(フリートレード)、偽りの自由と民主主義のイデオロギーを無理やり押し付け、

その国の文明を崩壊する傲慢なアメリカの態度や行動に、

辟易している世界の人々は多いはず。イラク戦争の失敗、侵略行為を見れば明らかだ。

そんな今日の流れにも繋がる、冷戦期の外交政策を指揮したのが、(大袈裟に言えば)

兄ジョン・フォスター・ダレス(元国務長官)と、弟アレン・ダレス(元CIA長官)のダレス兄弟。

ワシントンの国際空港の名前にもなっている。祖父、叔父も国務長官を務めた。



               ジョン・クインシー・アダムス



         (左)ジョン・フォスター・ダレス、(右)アレン・ウェルシュ・ダレス


共産主義の酷さも認識しているが、そのことも踏まえてみても、とんでもない兄弟。

すべてが映画みたいにうまくいくはずがなく、失敗もたくさんしている。

不確かな情報や陰謀を鵜呑みにして介入した例もあっただろ。

何故これ程までに他国に過剰に介入するのか。

失敗しても悪びれる様子もなく、ケロッとしているのが腑に落ちない。裁かれることもない。

ソ連(ロシア)と中国も同じか。


ダレス兄弟の思想の根幹が宣教師的信条。

ウッドロー・ウィルソン大統領の思想に共鳴していた。ウィルソニアン(国際主義者)。
(この辺も機会があれば取り上げたい)



           第28代アメリカ合衆国大統領・ウッドロー・ウィルソン


キリスト教を信じる者だけが理解できる「永遠の真実」を信じ、

未開社会や後進国を啓蒙する義務があると考え、

自分達が介入した国々には安定と繁栄と自由が訪れると本気で信じて、

他国に介入、侵略する。しかも褒められてよいくらいだと考えている。

(今のアメリカにも脈々と受け継がれていると思うのは気のせいだろうか)

侵略、介入された国は二度と立ち上がれないほど屈辱とダメージを受ける。文明を破壊する。

アフガニスタンやイラク、或いは、日本を見れば一目瞭然のこと。

アメリカの外交官だったジョージ・ケナンの指摘を思い出す。

まさにパラノイア合衆国。


陰謀に対する恐れは、植民地時代から現代まで、急進派のみならず体制側にも、

政治的主義主張を跨いで存在してきた。

陰謀論は、

十七世紀の北米先住民との闘争からにわかに景気に沸いた「金ぴか時代」の労働闘争まで、

南北戦争から冷戦まで、アメリカ独立戦争からテロとの戦いまで、

さまざまな紛争で大きな役割を担ってきた。

対立のきわめて激しい時代ばかりでなく、比較的平静の保てれているときにも、

陰謀説ははびこっていた。

そして反体制派や社会規範を逸脱する者たちばかりでなく、

権力中枢にある個人や組織でも広く信じられた。

陰謀論は歴史に彩りを添えるだけの脇役ではない。この国の核心にあるのだ。

『パラノイア合衆国』 ジェシー・ウォーカー


そして、著者のジェシー・ウォーカーは、

本書の中でポール・ロージンの的確な一節を引用している。


無秩序、文明の崩壊、部外者による支配の象徴としてアメリカ史にはじめて登場したのは、

インディアンだった。・・・・

一八七〇年代から繰り返してこの国を席巻してきた赤狩りは、

この最初の赤の恐怖に端を発している。

( マイケル・ポール・ロージン )


熱狂的で極端でタフを演じ続け、

欺瞞と傲慢と迷信と陰謀論を継ぎ接ぎした旗を掲げては他国に振りかざす。

それがアメリカ合衆国。

リメンバー方式の悪い癖も直らないだろうと予想する。日本とは正反対の国に見える。

そろそろ日本は、アメリカの力ばかりを頼るのではなく、

自力でも防衛努力をするべき時期に差し掛かっているのではないのか、とも感じる。

しかし、共産主義はもっと恐ろしく、酷いということも脳裏をよぎる。

面白い時代に生まれてよかったと感謝しながら、今日は綴じる。

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スティーブン キンザー 草思社 2015-11-19
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ジェシー・ウォーカー 河出書房新社 2015-08-18