近年の混迷している国際政治がとても心配だ。僕だけではないはず。
第二次世界大戦後の国際秩序が壊れかけているのが明白。
2013年にオバマ大統領が、「 アメリカは世界の警察官ではない 」と、
発言してからか、知らないが。
力を背景に露骨に国境を変えようとする勢力が目につくようになった。
そもそもパックス・アメリカーナもおかしいが。
中東、クリミア、南シナ海、東シナ海、朝鮮半島、核拡散。大混乱、大暴走。
難民問題も深刻。
危機の時代にどうするかと憂い、国際政治に興味を持たざるをえなくなった。
カーやモーゲンソー、ハンチントン、キッシンジャー、ミヤシャイマー「 大国政治の悲劇 」、
ジョージ・ケナン「二十世紀を生きて – ある個人と政治の哲学」は読んでいた。
最近注目のエドワード・ルトワックも読んだ。ケネス・ウォルツ、高坂正堯は今後読みたい、
と思っている。
だがしかし、もっと体系的にわかりやすく、
尚且つ浅すぎず程よい深みのある国際政治の秩序を論じた本は無いかと探していた。
そんな時に出会ったのが、細谷雄一氏の「国際秩序」。
しかも新書で手に取りやすく読みやすい。
( 細谷雄一、慶應義塾大学法学部教授。 専門は国際政治史、イギリス外交史 )
著者の細谷雄一氏は、国際政治、イギリス外交史が、ご専門の慶應義塾大学法学部教授。
本書は、ヨーロッパから始まる「均衡」「協調」「共同体」を軸にし、
現代に至る三〇〇年の国際政治の変換を読み解いている。
世界を「面」としての国際秩序ととらえて、その多国間関係の移り変わりを、
歴史という大きな器のなかに入れて展望することにある、としていて、
その「 面 」としての視点と、時代によって移り変わる世界情勢を
うまく捉えて論じられているので、流れがつかめ、とてもわかりやすい。
とくに重要な概念が、
「均衡」( バランス )、「協調」( コンサート )、「共同体」( コミュニティ )。
トマス・ホップス、デイヴィッド・ヒューム、エメーリヒ・デ・ヴァッテル、
アダム・スミス、イマヌエル・カント、エドマンド・バークたちが生み出した概念。
ウィリアム・ピット、カースルレイ、メッテルニヒ、タレーランの
「均衡」と「協調」のウィーン体制。
それが崩れ、パーマストン、ビスマルク、ディズレリーなどの
「協調」なき「均衡」のビスマルク体制。
それも崩壊し、国際秩序がグローバル化し、二度の世界戦争の時代へ。
さらに核時代と冷戦。リベラルな秩序が成立。
その流れで新しい世界秩序が成立したが挫折。
そして太平洋の時代の現代へ。
要約したらこのような流れ。
どんどん野蛮な体制になっていると、感じるのは気のせいなのか?
個人的にウィーン体制前後の記述が詳しく、とても参考になった。
外交の始まりは、一六四八年のウェストファリア条約で三十年戦争の講和条約。
対立する相手を悪魔化してはいけない。国境の確定。覇権争いをしない。
ベースにバランス・オブ・パワー。次に協調。範囲を広くし共同体。
ヨーロッパの外交理念がグローバル化し、それが国際的になった。
多極構造が普通なのかもしれない。現在の一極構造が問題。崩れそうだけど。
著者の細谷雄一氏は、イギリス外交史がご専門であり、
パクス・ブリタニカ時代の、イギリスのバランサーとしての流れもわかりやすかった。
どんなに素晴らしい秩序を作り、維持していても、結局は無残に崩壊し最初に戻る。
不完全で不確実。
「 祇園精舎の鐘の声~ 」が分かる国はどのくらいあるのかな?と思う。
特にロシア、中国、北朝鮮、アメリカ。
「野蛮」といったら言い過ぎか?